新作イラスト、仕事9点、個展のオリジナル作品7点を更新しました。よろしかったらご覧ください。
今日はバレンタインデーですね。
男性の皆さま、楽しい一日をお過ごしください☆
一昨日、見逃していた映画「つつんで、ひらいて」が
吉祥寺のアップリンクという映画館で上映されていたので
観に行ってきました。
「くしゃくしゃくしゃくしゃ」
と紙を丸める音から始まるこの映画。
菊地信義さんという装丁家のドキュメンタリーなのですが
装丁家の方の日常や仕事部屋、装丁をされている様子、想いなどが
淡々と記録されていて興味深かったです。
同じ一冊の本を作ることに携るクリエイターとして
色々と感じるところが多い映画でした。
菊地さんは70代中盤になろうかという装丁界の重鎮なのですが
1万5千冊もの本のデザインをされた装丁家のご意見としては
とても意外なものが多くて、それだけの業績を成し遂げた方にしか
立てない境地というものがあるのだな、と思いました。
ここから少しネタバレしますので、これから映画を観る方は
ご注意くださいね。↓
昔は「文芸書が人を作る」なんて豪語していたけれど
文芸書の装丁を沢山手がけるうちに、自分の中に何も無くなってしまい
そして70代になり空っぽになってしまった。
それだけ人の心の在り様は多様だった。
30年間装丁という仕事をしていて
自分はラッキーだったと思うし、いつ死んでも悔いはないという
仕事もできたと思うが、未だに「達成感」というものは
一度も味わったことが無い。
という二つのご意見(すみません、憶えている限りなので
言葉の言い回しとか違うところがあるかと思います。)がとても印象的でした。
人はどこに向かって生きて進んでいるのだろうか?
なんて事を考えてしまいました。
そして装丁をされている現場をこういった形で観るのは初めてだったので
(菊地さんのスタイルは、多分今の若い方と違うと思いますが)
興味深かったです。
菊地さんの装丁を初めて意識したのは
大学の授業で俵万智さんの「サラダ記念日」という歌集の
帯のキャッチコピーを考える授業だったかと思います。
1980年代、万智さんの短歌の魅力もさることながら
菊池さんの装丁が追い風になり、280万部の売り上げとなった歌集です。
漆黒が美しい物憂げに下を向いている万智さんの写真に
ベビーピンクの文字が重なっていて
そのギャップが面白くて美しいなと感じました。
ちなみに私の考えたキャッチコピーは。。。
「新人類なんてことばで片づけないで、私の気持ち」でした。
当時の若者を「新人類」と呼んで揶揄する言い方が流行っていて
それに抵抗を感じていたので、その言葉を使ってみたのですが
先生にはありがたいことに褒めていただけたので
嬉しかったのを憶えています。
装丁家やデザイナーという仕事は、気がつかない内に私達の日常や
心情に影響を与えている仕事なのでは?と思います。
でもその功績はとても大きいと思うので、こういった形で
装丁家というものがクローズアップされていくのは
良い事なんじゃないかと思いました。